気候の安定した平穏なハートの海賊団の船の船長室にて。
相変わらずまるでその部屋を自室のように振る舞うは、ソファに腰を下ろしファッション雑誌を眺めていた。時間を持て余していたローも彼女の隣に腰を下ろし、彼女が眺める雑誌を興味無さげに見るともなしに目にいれる。
そしてそのうちに彼女が興味深そうに眺めるモデルに共通点を見つけた。
「ブロンドが好きなのか?」
「え?……そうね。でもブルネットも好きでしてよ?」
「…そこで気遣っていらねぇよ」
はもう一度先ほどまで眺めていた、ブロンドのモデルをジッと見つめてから、パタンと小気味良い音をたて雑誌を閉じた。
「私ね、メラニン色素が少ないの」
「見りゃ分かる」
「でも、生まれつきではないの」
「…なるほど」
メラニン色素が少ない生き物は総じて色が白く紫外線に弱い。そして、吸血鬼という存在はそういう生き物である。そう理解したローはそれ以上言及はしなかった。
「まあ、元々プラチナブロンドだったから、ホントたいした差ではないのだけれどね」
パッと見分からないのよ。と呟き、自らの肩を流れる長い銀糸の様な髪の色を確かめる様に、指を絡め軽く梳いた。
「儚げな金髪碧眼、それはもうモテましてよ?」
髪を梳きながら、ローに向かい意地の悪い笑みをその顔に浮かべて見せた。
「興味ねぇ」
「あら、つまらない」
食いつかなかったローに、面白くなさげにはほんの少し口を尖らせた。
そんなにローはうねりのない真っ直ぐな彼女の髪を一束取り、流しまた取りとその感触を楽しむ様に弄ぶ。
「気に入ってただけあって結構ショックだったのよ」
「おれは、この色がいい」
ローはまたの髪を一房取り、鼻先に近づけるとその香りを吸い込んだ。
「…気遣いは不要でしてよ?」
「遣ってねぇよ」
「何の味気もない色じゃない」
「光の加減でたまに虹彩を帯びている」
「余計生物って感じがないわ」
「…珍しく卑屈だな」
ふっとこみ上げる様に笑んだローは、の後頭部に手を当てると、自らの胸板に彼女の顔を押し当て、そのまま彼女の長い銀糸の様な髪を撫でる。
「お前が嫌でもおれが良いつってんだ。何の文句がある?」
「横暴」
「何か言ったか」
「いいえ。貴方が好きなら、いつか私も好きになれそうよ。…きっと」
心に染まる無彩色
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