立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花。そんな言葉がよくに合う、絶世の美貌を持ち備え、銀糸の様な穢れを知らない長髪を揺らめかせながら、が街を歩けば誰もが振り返る。
今回ハートの海賊団が上流した島も例外ではなく、一人街に繰り出し、いつもと同じく美味しそうな血を求め、人の集まる大通りを散策していた彼女は、男女問わず多くの人間から注目を集めていた。
しかし彼女は日陰者。本人としては本意ではない。
早々に本題を済ませて船へ帰ろうと思った矢先だった。
「お嬢さん、少しよろしいですか?」
の行く手を阻むかの様に現れた、眉目秀麗な一人の男性は、人当たりの良い笑みを浮かべ、彼女の顔を覗き込んだ。
「よろしくなくてよ。さようなら」
目も合わせず颯爽と立ち去ろうとしたに、男は人当たりの良い笑みを浮かべた顔を若干引きつらたが、それでもすぐに気を取り戻し彼女の後を追った。
「ほんの少しお話させて下さい、お嬢さん」
「話すことなんてありませんわ」
取り合おうともしないに痺れを切らしたのか、またしてもの行く手を阻み、今度は彼女の手を胸元で握った。
「しつこい男は嫌われましてよ」
それはドスの効いた声だった。その上に相手を射殺さんばかりに眼力の入った三白眼。そうまでしてでも彼女の魅力的な容姿は全く損なうことを知らない。
それでも男は手を離さなかった。
「待って下さい。一目見て分かったのです。私に釣り合う人は貴女だけだと」
「面白味がない」
「は…?」
「ベタ過ぎだと言っているのよ。自身家のナンパの典型。そんな枠にハマりきった男に女が靡くと思って?だいたい、容姿だけで釣り合うかどうかを決めるなんて、人間の度合いがしれていましてよ。美人を娶って自分を褒められていると勘違いしながら自尊心を保つ男なんて、それこそどこにでも居るわね。それで、そのどこにでもいるような普通の貴方が、私をいつまで拘束するつもりなのかしら?」
彼女の口から紡がれる辛辣な言葉に、しばらく固まっていた男は、が振りほどくまでもなく、男は項垂れながら彼女に背を向けた。
気づけば先ほどとは違った意味で注目を集めていたは、ここまで目立ちすぎれば海軍もやってくるかもしれないと思いいたり、あいつさえいなければと恨み言を呟きながら船に戻ろうと踵を返した。
そして振り返りざま、を傍観しているローの姿が目にはいる。
「…見てたらなら助けなさいな」
どちらともなくお互い歩み寄り、そのまま船着場の方向を向いて歩き出した。
「必要ねぇだろ?」
「私があの人につれて行かれたら、どうしたのよ」
「それこそ必要ねぇ仮定だ。お前はおれを裏切らねぇし、助けが必要なほど弱くもねぇよ」
「信用も信頼もされてると分かってても女として複雑よ…」
そんな自惚れお断り
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