ハートの海賊団船内、船長室にて。その部屋、しいてその海賊船の主であるローと、彼の側近であるは、読書に勤しんだり、お茶を嗜んだりと、各々自分の時間を過ごしていた。
しかしおもむろにが、ソファに座り本に目を向けていたローの隣のへ座り、珍しくも屈託のない満面の笑みを彼に向け、両腕を広げてみせた事から二人の時間は交わる事になる。


「おいでなさいなロー。抱きしめて上げるわ」
「…何企んでやがる」
「企みがなければ好意を与えないほどひねてはないわよ。さあおいでなさいな」


にこにこという効果音の付きそうなまでの、邪念のない笑顔に、ローは一瞬たじろいだが、一つため息を吐いてから、手に持っていたハードカバーの本を、机へと無造作に置いた。


「で、何なんだ、急に」
「何なんでしょうね、急に。そんな日もあるわよ」
「ならそこはせめて、抱きしめて欲しい、じゃないか?女なら」
「あらそうなのかしら?でも受動的なのは好きじゃないわ」
「だろうな」
「分かってるなら四の五の言わずに、おいでなさい」


彼女の突拍子もない言動と行動は今に初まった事ではない。ローは訝しみながらも、いつもの事か、と半ば諦めたかの様に心中で呟きながら、にその身を寄せた。
そうすれば待ってましたとばかりに、すぐさま彼の背中へと腕がスルリと回された。

「あぁ、暖まる…」
「てめェ…それが理由か。人を懐炉変わりにすんじゃねェ」
「まぁ七割本気の冗談は置いといて」
「………」


呆れて物も言えないといった状態のローに、は彼の背中へと回した腕を更に密着させるために、きゅっと力を込めた。


「随分成長したわよね、ロー」
「…お前と知り合ってから、随分経ったからな」
「だからかしら。こうしてると、一番時の流れを感じるのよ」


感慨深いって言葉、こういう時使うのかしら。と自嘲するかの様に呟いたに、ローは手持ち無沙汰にしていた腕を、彼女の背中へとゆっくりと回し、抱きしめ返した。


「なら好きな時にこうすりゃいい」
「あら…ありがと」
「……何がだ」
「ふふ、なら、何でもないわ」


時の流れを懐かしむ



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