銀糸のようなうねりの一つもない真っ直ぐな髪。嫋やかなそれは微かな虹彩を放ち、神秘的だと見る者に印象付けさせる。
シンメトリーに配置された、キレの長い大きな目には、まるでアメジストの様な美しい紫色の瞳があしらわれ、一度目を合わせれば、吸い込まれるかのように目を奪われ魅了される。
女性特有のおうとつがハッキリと現れた体のライン。バランスのとれた手足の長さ。抜ける様に白い象牙色の肌。
どこをとっても非の打ち所がない美貌の持ち主。

それが、宵闇の

ニュースクーに書かれた、己の絶賛とも取れる容姿説明を読み終えたは、軽くため息を吐いてからその新聞を綺麗に折りたたむ。

「誰がこれを犯罪者の容姿説明だと思うのよ」

船内の食堂にて、カウンターに無造作に置かれた新聞を何気なく読んでみたが、読むべきではなかったかと心の中で独りごちる。

一見して女優の容姿を褒めているかのようなその文章は、彼女の呟き通り指名手配犯の特徴を述べるはずの新聞記事欄だ。

「これだけ事細かに書かれてるって事は随分長い間観察されたんだろうな」

何処からともなく現れたローは、普段と変わらぬ不敵な笑みを顔に湛え、を見下ろしながら、彼女の隣の席へと腰掛けた。

「そう、そこよ。そういう事なのよね…前の島で知り合ったこ達の中に記者が居たのかしら…」
「……」

呆れを隠さず、半目でを見ているローに気づかないフリをしながら、頭を抱えた。

「シャーロットかしら、なかなか頭のよさそうな子だったし。もしかしてリディア?うーん違うわね。アン、クリスティン、ブランカ、フローリア…後は………、あぁ、皆美味しかった…」
「…自分が日陰者だってこと忘れてねぇか?」
「それが何?可愛い女の子達と知り合う事は私の生きがいなのよ!?」
「あーそーだろーな」

それは適当という言葉を、体現したような相槌だった。それを聞いてようやく、は平常心を取り戻し、コホンと一つわざとらしい咳払いをする。

「ただしそれは捕食者の意見であって、目をつけられた人間はたまったもんじゃねぇ」

突然真剣な顔つきでこぼしたローの言葉に、キョトンとしただったが、彼の言わんとした言葉の意味に気づき、フッと一瞬だけ微笑ましそうな表情を浮かべる。

「あら、それは貴方もそうだから?」

今度は不敵に、それでいて艶然という言葉が最も相応しい笑みを、その美しい顔に湛え、ローを見据えた。

「…さあな」




宵闇の
写真に写す事のできない、魔性の魅力を持つ吸血鬼。
一度血を吸われれば、次からは此方から追い求め、捕食される事を希ってしまう麻薬の様な吸血鬼。


魔性の彼女を追いかける




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