「あの女の身体は確かに寸分違わず俺の知るだった。だから、視覚に異常がでた訳じゃねえ。となると」
「人格が入れ替わってる、ですか…?」
信じれないとばかりに怪訝そうな声で確認したペンギンに、少女もとい精神はハートの海賊団の船員であるがコクリと頷いた。
「そう、そういうことよ」
「自分以外にそんな事ができる奴が居るとは思わねぇだけに盲点だった…」
悔いるように息を吐いたローは額に手を当て普段以上に眉間にしわを寄せ、抱き起こした少女の姿をするを見下ろした。
「にしても、よく分かったわね。面白がってかなり引っ掻き回したというのに。だからってこの娘の身体を傷つけるわけにもいかないでしょう?こんなに可愛いのよ?でも戻らないわけにもいかないから大変だったわ」
「あぁ…この感じ…間違いなくっすね…」
「……口調変えたり執事をエルドラドと思わせたのはワザとか」
「お前そんな事してたのかよ…!?」
発覚が遅れたのは明らかに当の本人が原因であるという事実に、ローは口角を引きつらせ米神に薄っすらと血管を浮き上がらせ、ペンギンは呆れたとばかりにあんぐりと口を開く。
静かに怒りを露わにするローには苦笑し、自分の行いを素直に謝った。
「悪かったと思っていましてよ?まさか貴方がこんなに戸惑うなんて思わなかったのだもの」
「“”じゃねぇんだ。戸惑うにきまってんだろ。それに…」
初めて姿の変わってしまったの、邸の部屋の中からローを見下ろしていた彼女の面持ちがローの脳裏を過る。
「笑い方が独特なんだよお前。見下したような慈悲のある顔なんて、お前しか出来ねぇ」
「…言われてもいまいちぴんとこない笑い方ねぇ」
「それに加えて、銃の持ち方が様になっている…つまり、戦闘慣れしてやがる。この平和な島で、だ。もう部外者だと語ってるようなもんだろ」
「確信をつく場所がそこねぇ…。まぁ、なかなか嬉しいかもしれないわね。分かってくれるって」
ふふと微笑んでからはローに預けた上体を起こそうとしたが、ほんの少し身体を動かしただけでピタリと動きを止め、またしてもローにぐったりと身体を委ねた。
「あー…、人間の体って不便だわ。たったアレだけ殴られただけなのに…」
「タンカー持って来ますか?」
「いや、いい。おれが運ぶ」
「中身がとはいえ、よく知らない女を船長が運ぶって何か変な感じですね…」
を横抱きにして立ち上がったローを見てペンギンは乾いた笑い声を小さく立てながら呟いた。
その場を後にしようと歩き出した二人に、はハッとした様に一瞬目を見開いた後、静止を促すためにローの肩をぽんぽんと何度か叩いた。
「お待ちなさいな。クラヴァット…、彼も一緒に連れて行って」
が指をさしたのは、一般人に向けるには強烈な回し蹴りを食らわされ、今だ気絶している執事の男だった。
一瞬完全に動きを止めたローとペンギンは、驚愕の色が濃い眼差しをに向ける。
ペンギンは兎も角、ローが見せる珍しい表情に、わけが分からないとも困惑顔で二人を交互に見やった。
「…お前が男に情けをかけるのか?」
それはローとペンギンが同時に同じ言葉でに投げかけた質問だった。
「貴方達が私の事どう思ってるのかよぉぉぉく分かりましてよ!…間違ってないけど」
「間違ってねぇのかよっ!」
「入れ替えたの彼なのよ。貴方の能力で戻るかどうか分からないでしょう?」
納得したと同時に、じゃあおれが背負って行きますね!と言い残し執事に駆け寄ったペンギンの背を眺め、彼が執事を背をった事だけを見届けローは密林を出るべく歩き出した。
「帰ったら洗いざらい吐いてもらうからな」
「えぇ。それは当然」
ふふと苦笑する造形の違うを苦々し気にジッと見たローは視線を正面に戻し呟く。
「見た目はどうであれ、お前が無事でよかった」
「えぇ。でも、早く戻らないと、貴方の精神衛生面の方が宜しくなさそうね」
「…全くだ」